【闇を照らすもの】












「おい流川。良いモンやるよ」

「…なんスか」

「これこれ」

「………」

「おめーも男なら身嗜みとして常備してねーとな!」

「………」

「この前通販で買ったんだよ。だからお裾分け」

「ッス……」

「とりあえず3つやるけど、良さそうだったら言えよ。今度は代わりに買ってやるから」

「どうもッス」

「…………」

 流川は受け取ったそれをバックの中に仕舞い、ペコリとお辞儀をして部室を出て行った。

「三井さん、あいつの反応どう思います?」

「いや〜。流石の俺にも分からんわ」

「もう常備してたりして」

「っつーか、やっぱり使う相手いるのかよ」

「たぶん」

「どんな奴だかスゲー気になる!」

「流川の好みって全然わからねーっスからね」

「巨乳か?」

「案外貧乳じゃ…」

「年上とか」

「年下かも?」

「何だよ年下って。中学生かよ!」

「その下」

「うへー!やめろー!ロリコン流川かー!」

 嫌そうにしながらも三井はかなり楽しそうだ。

「それにしてもあいつ、何も聞かなかったなぁ」

「三井さんが教えてやれば良かったのに」

「お前が言えよ!」

「イヤっすよ、言ったらつまんねーし」

「……だよな」

「ですよ」

 二人同時にぶっと吹き出した。

「あれ使った時の流川の反応が見てぇー!」

「相手の反応もでしょ!」

「だってあれ、どんなになるのか想像するだけでも……っ!」

「やめて下さいよ三井さん!笑い過ぎて呼吸出来ねーっ!」

 二人は目尻に浮かぶ涙を拭いつつ、腹をかかえて笑っていた。











   ★★★












「る……も、だめ………」

「俺も……」

 流川の手が花道の急所を掴んで容赦無く擦るので、もうどうにかなりそうだ。

「はや…く………」

 訴えてくる花道の上に覆いかぶさり枕の下からゴムを取り出した。

 花道の気が削がれないうちに素早くそれを装着する。

「…………」

「……どし……た?」

 いつもなら花道に考える間を与えることなく次へ進むのに、今日の流川はなぜか動きを止めてしまっている。

 それを不審に思い花道は気だるげに目を開けて、自分の足の間に膝立ちしている男を見た。

 するとなぜか、そこにはあるはずの無い光がぼんやり見える。

「……え……?」

 発情している体がツライがその光が気になった花道は、もっと良く見ようと目を凝らした。

「…な、なんだそれ……」

「…………光ってるみてぇ……ゴムが」

「は?!」 

 流川は自分の股間に装着したゴムを立ち膝のまま珍しそうに眺めている。

 もちろん彼の息子は今にも発射オーライ!状態だ。

「ひ、光って…?」

 花道はそのあやしげな蛍光ピンクの光を凝視した。

 明るいところでスルのを花道が嫌がるので、いつも部屋の明かりを消して真っ暗にしている。

 しかしそのゴムはそんな暗闇なんぞものともしない。

 なんせ自ら発光しているのだから。

 流川の体は本当にぼんやりとしか見えないのに、その息子の形は非常に良く分かる。

 その様子はさながら暗い森に生えている【ピンクに光る松茸】であった。

「どうしたんだよ、そんなの!まさかお前自分で買ったのかよ!いつものはどうした!」

 火照った体もなんのその。

 花道が矢継ぎ早に訊ねると「三井先輩に貰った」と答えが返ってきた。

「もらっ………そんなもの貰うな!バカ!」

 情けなくて思わず涙が出そうになるが、それでもその発光物体から目が離せない。

「くれるっていうから貰っただけ。どうせ使うんだし」

「でもっ!」

「良いから気にすんな。続き……」

「気にするだろ、それっ…あ!」

 お留守だった急所への愛撫を突然再開されて、花道は自分が官能に支配されていたことを思い出した。

「もっ…なんだよ…っ…そんなのっ…あぅん!やめ…」

 熱を一気に呼び戻そうと流川は花道の分身を口に深く含んで強く吸い上げる。

 勿論根元は指で締めたまま。

 そっと口を離すと、花道の膝裏に手を添えて胸元へ倒す。

 両足を肩へ乗せ、上体を倒すと花道の腰が浮き上がった。

 流川は慣れた手付きで己に手を添え、蕾へ近づける。

(あ………)

 流川の息子が自ら淡いながらも光を発するので、近づくと花道の蕾がいつもより良く見える。

 暗くてもその光のおかげでぼんやり見えるので、狙いが定めやすい。

 ……「何の」とは言わないが。

「!」

 先を少しだけめり込ませると、自分自身に伝わる感触と共に発光物体の先端が消えていくのが分かった。

「……」

 流川はそれが挿入されていく様子をもっとしっかり見たくなり、肩に乗せていた足を下ろし膝裏を花道の胸につくほど折り曲げる。

「スゲ……よく見える。入るのが……」

 自分が先へ進むたびに発光物体の先端が見えなくなるのが面白くて、流川はついついゆっくり挿入してみたり、ちょっと早めにグラインドしてみたり、グルグル腰を回してみたり、色々試してみた。

「どあほう…これイイ…っ…」

「る…かぁ…あっあっあっ!ダメ!はん!」

「イクぞ!」

「ああん!」

 二人同時にイッた時、流川は即決していた。

(通販決定……)










   ★★★













 ある日の放課後。

 部活が始まる直前に、流川は三井を捕まえた。

「先輩」

「あ?」

「あれ、通販頼みます」

「………あれって……あれか?!」

 こくりと頷く流川。

(マジかー!)

 三井はあからさまにびっくりした顔を見せ、しかしすぐにニヤリと笑った。

「良かったのか、あれ」

「最高っす」

「そうか!そりゃ良かった!」

 三井は満足げな顔をしてうんうん頷いている。

「いくらっすか」

「ん?あぁ良いよ。まだ一箱あるからやるよ」

 そう言って部室のロッカーを開けて隠していた箱を取り出した。

「未開封だけど、全部やるよ。俺は合わなかったから」

「そうっスか、どうも……」

「いやいや良いってことよ。…………ところで」

 またしてもイヤらしい笑みを浮かべて三井は流川に擦り寄った。

「せっかくタダで譲るんだから話ぐれぇ聞かせろよ」

「なんスか?」

「おめーの女のことだよ!」

 そう言って流川の脇腹を肘でどつく。

「女?」

「これ使った時のこと聞かせろって言ってんだよ!」

 先輩命令だ!

 そう言ってワクワクしながら流川の報告を聞き出そうとすると、丁度良いタイミングで部室のドアが開いた。

 花道だ。

「チーッス!」

「あ!桜木!」

「ミッチー?何やってんだ?」

 二人がコソコソやっているので花道は訝しげに自分のロッカーへ向かった。

 そして「天才〜♪」と上機嫌で鼻歌を歌いながらさっさと着替えるその後ろでは、まだ三井が流川にからんでいた。

「ミッチー!先行ってんぞー!」

「あ!待て待て桜木!」

 そう言って部室を出て行こうとする花道を三井が慌てて呼び止めた。

 三井は「口の堅い野郎だぜ!」とブチブチ文句を言いながら流川が持っている箱を取り上げた。

「お前にもやるよ!どうせ使わねーだろうけどよ!」

 可愛い後輩が受け取った時の反応を見てからかってやろう、と三井は花道にも例のゴムを3つ取り出して投げた。

「なんだぁ?」

 空中で上手くキャッチしたそれを見てみれば―――。

「こ、これは………」

「使わなくてもお守りくらいには」

 なるんじゃないか――、と言いかけて終った。

「ミッチーの変態野郎!」

「イテーッ!」

 花道は顔を真っ赤にして怒鳴りつけ、三井へ頭突きを一発お見舞いした。

 やられた三井は思い切り顔をしかめたが、あの反応は予想以上だった。

 床には3つのゴムが落ちている。

「何だってんだ?」

 首を捻る三井をゆっくりと流川が見た。

「先輩」

「あ?」

「あいつスゲー燃えてました」

「はぁ?」

「なんか俺も興奮したけど、あいつもノリノリだった」

(3つ目使った時、”面白い”とか言いながら俺のアレに被せてくれたし……)

 使った時のことを思い出し流川はにやりと笑った。

「カッキテキアイテムをどうも」

「………はぁ?」

 ペコリとお辞儀をして三井の手から箱を毟り取る。

 更に床に落ちたゴム3つをご丁寧に拾って箱へ仕舞う。

 それをササッとバッグへ放り込み、スタスタと何事も無かったかのように体育館へ向かった後輩の背中を三井はポカーンと見送った。














END












ようやく載せられた(笑)これはうちのサイトの小説の中ではおそらく
恋火の次に反響が大きかった小説です。短編の中では間違い無く
トップだ(笑)書いた本人はどうしてここまでウケたのか謎なんだが(笑)
このゴムは実際にあります。私はとある通販サイトを見ててたまたま
目に入ってきて、何だろうと出来心で商品説明を読んでしまった
んです(笑)んで、これが本当なら面白い!と思って思いつきで
バーッと一気に書き上げてひょいと拍手のお礼に載せてしまった
のでした(笑)そしたらまぁ、来るは来るはメッセージが(笑)しかも
皆さんなんだか楽しそうな嬉しそうなウキウキした感じだったんです。
コメントからウキウキさがもろ伝わってきた(笑)そこで悟ったんです。
やっぱりみんなこういう下ネタ系が好きなのね…と(笑)
私も登場人物の台詞回しが気に入ってるので、好きな小説です。
読んでくれる方も【暗闇の中でピンクに光るマツタケ】を想像してくれたら
嬉しいです(笑)それも特大サイズ、でね(笑)


(2005年8月7日初出)






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