【携帯電話】  (2)






 夜の21時過ぎ。

 部活終了後。

 部員が全て帰宅して、部室には既に誰も残っていない。

 流川はそんな人気の無い部室で一人携帯電話を取り出した。

 ここ2〜3日なんとなく忙しくて電話しそびれていた。

 声がむしょうに聞きたかった。



プルルルルル



ピッ



「どあ―――」

『るっかわーーー!』

 電話が通じたかと思ったら、大音声で名前を呼ばれた。

「どあほう!鼓膜が破れる!」

『何だー?聞こえねーぞー』

 もしもーし!

 花道は間延びした声で携帯に語りかけてるようだ。

 よくよく耳を澄ますと、向こう側がやけに騒がしい。

「おい、後ろがうるせえ。今、どこにいるんだ?」

『あ?自分ちに決まってんだろー』

「お前…酔っ払てるな」

『天才は酔ってませんよーだ』

「それを酔ってるって言うんだ」

 その時、花道以外の男の声がした。

『桜木−!何だよ!彼女から電話かー?生意気だ!』

 不愉快な男の声に、流川は眉を寄せた。

 しかしその不愉快さも後に続く花道の言葉で綺麗に消え去った。

『てめーら!羨ましいだろう!』

 天才の恋人さまから、愛のお電話なのだ!

 またしても耳元から大音声が響いた。

「おい、どあほう!」

 思わず流川は花道に声を掛けた。

 しかし全く聞こえてないらしい。

『名前はぁ、楓っつーんだ!俺たちラブラブよー?』

 間抜けな声でとんでも無いことを口走っている。

「このバカっ!」

 これ以上放っておくと余計なことを喋りそうだったので、流川は焦った。

 しかしやっぱり聞こえていないらしい。

『じゃーな!楓ちゃーん!愛してまーす!まったねー!』


チュッ


 軽いキスの音がして、通話が切れた。

「おい!ちょっと待て!」

 話し掛けたがもう遅い。

「ちっ。切りやがった、あのどあほう!」

 悪態をつきながら、流川は携帯電話の通話を切った。

「ったく……。何が愛のお電話だ。何がラブラブだ………」

 しかも楓ちゃん愛してます、かよ。

 恥ずかしすぎる。

 流川は悪態をつきながらも、頬が弛むのを抑え切れなかった。
























初めて載せたのは2004年3月1日です。
WEB拍手のお礼の一つとして書きました。
アンケートでの続編希望が多かったので、これまた調子に乗った(笑)
そしてなぜか好評でした。「楓ちゃん」が(笑)
自分でもなんつーものを書いたんだ!と感想を頂くたびに
恥ずかしくて仕方無かったです(ホントに…汗)
でも反応をたくさん頂いたので、そういう意味ではとても
思い出深いSSです…(笑)
当時メッセージを下さった皆さんありがとうございました♪


(2004年3月1日初出)




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