【HappyCapsule】 (6)
そしてあれよあれよと言う間に、合コン当日。
『なんか隠してない?』
と、時に笑顔で、時に悲しそうな顔で、そして時には真剣な顔で何度も問いかけてくる仙道を必死でなんとか誤魔化し、ようやく当日になった。
『お前ら、何か俺に秘密にしてることあるだろう』
と同じように問い掛ける洋平も、信長と二人でなんとかかんとか誤魔化した。
誤魔化せたかどうか正直自信が無いが、何も突っ込まれなかったので大丈夫だったと思うことにする。
罪悪感は勿論あるが、それよりもやはり信長の恋を助けてやりたいという思いが勝り、花道は下手くそながらも演技を頑張ったのだ。
そして昨日は何故か花道まで緊張してしまい、なかなか寝付けなかったのである。
「っしゃ!気合入れるぜ!」
と、花道はやや寝不足な顔をしつつ朝食の支度をしながらキッチンで一人また吼える。
「何を気合入れるって?」
「おわ!」
背後から腰に手を回し抱き締めてきた男は当然仙道だ。
「お、起きたのかセンドウ!」
「うん、おはよう」
「お、おう……」
肩に顔を擦り付けてくるので、長めの前髪が首筋を掠めてくすぐったい。
「なぁ、何を気合入れるって……?」
「う?あ、いや…別に…」
焦りつつ何でも無いと首を振る。
「今日は……確か友達と遊ぶって言ってたよね。……信長くんと」
「そうだ!だから気合を―――」
「友達と遊ぶのに、わざわざ気合?」
「そうだ!」
「ふーん……」
冷や汗をかく花道の背後で何を考えているのか、仙道の反応は薄かった。
今日は信長と一日遊ぶと前々から話してあった。
夕飯も食べてくるから遅くなるとも伝えてあったので、仙道は少し拗ねたがそれでも了解してくれた。
「あ〜あ、せっかくの休日なのに一日中一人かぁ。つまんないなぁ」
耳元で盛大な溜息をつくと、花道の肩にまた頭を擦りつけてきた。
「こんなに天気が良いのに…。どこか二人で出かけたかったなぁ」
「う……」
当て擦りだと分かっているが、根が優しい花道にはこういう攻撃がかなり堪える。
しょぼくれた横顔を確かめると、仙道はふっと笑った。
「ウソウソ。良い天気だから洗濯でもしておくよ。布団も干しとく。だからいっぱい遊んできな」
そう言って花道の腹に回した手に少し力を込めて抱き締めてくる。
「たまには主婦します」
奥さんにも息抜きは大切だからね。
そして寝起き姿の男は振り向いた奥さんの頬へ口吻ける。
「わ!こら!」
照れて慌てる花道から離れ、楽しそうにコーヒーを入れ始めた。
「…………」
そんな仙道を複雑な表情で見る花道だった。
「旦那、平気だったか?」
待ち合わせ場所へ行くと、開口一番そう問われた。
かなり心配そうな顔をしている。
「ああ、多分」
「多分か………」
信長は眉毛を八の時にして困った顔をする。
「と、とにかく大丈夫のはずだ!今日は一日主婦するって言ってたからよ!」
「主婦?なんだそりゃ」
「まぁなんだ。俺が毎日頑張ってるから、息抜きしろってことだ!俺の家事は天才的だからな!」
「意味わかんねーよ……」
がくっと肩を落とす信長に、そんなことより!と花道は身を乗り出した。
「どうすんだよこれから」
「あ、そうそう!それなんだけどよ………」
今日のスケジュールを確認する。
これから待ち合わせのレストランへ。
そこで自己紹介がてら昼食を取る。
その後軽くゲーセンでブラブラし、最後はお約束のカラオケコース。
ざっとそんなところだ。
幹事が言うには、何かあればその都度変更可らしい。
最悪の場合はその場で一度解散し、再び集合ということもありえる。
仙道達に見つかれば、の話だが。
「ふーん。んじゃ最初に飯か。何食うんだ?」
「さあ。それは聞いてねえや」
「あー、腹減った!」
「…………」
信長は隣の男の台詞で思わず自分の財布の中身を確認してしまった。
(もうちっと下ろしておいた方が良かったかな……)
ただでさえキツイのに、これ以上出費が増えたらたまらない。
あんまり高い店じゃないと良いなあとボソッと呟いた彼に罪は無い。
≪≪ novel-top ≫≫